- はじめに|うつ病からの復職は『焦らない』
- 復職後のうつ病の再発率
- 復職後のうつ病の再発は不安
- うつ病の回復には3段階の目安がある
- うつ病から復職するための6つの方法
- うつ病と付き合いながら働くための5つの心構え
- おわりに|復職はゴールではない
はじめに|うつ病からの復職は『焦らない』
僕はうつ病です。2017年12月に、うつ病による体調不良を理由に一度会社を辞めて転職という名の復職(社会復帰)をしましたが、その会社もうつ病を理由に1ヶ月で辞めました。そして二週間の休養期間を経て、今はアルバイトとしてWebライターの仕事をしています。
1つの大事な心構えを初めにお伝えすると、うつ病から復職するにあたって最も大事なことは『焦らない』ということです。
たとえ体調が少し良くなったように感じたとしても、すぐには復職しないことをおすすめします。復職後も再発せずに働ける状態まで回復した上で復職することが大切です。
傷病手当金の期間が終わるからといって、焦って復職しないようにしましょう。
僕は焦って復職(社会復帰)をしたせいで、アルバイトの今も毎日うつによる落ち込みと不安感に苛まれています。なので、同じ過ちをほかの人にはしてほしくないです。
そのため、この記事では、実際にうつ病である僕の復職の経験を通して伝えたいことと、病院や本から学んだうつ病から復職するための手順を紹介します。
復職後のうつ病の再発率
日本では、うつ病が原因で休職した人のうち、職場復帰後の再発率は50%と言われており、その後、休職と復職を繰り返すたびに再発率は上がり、2回目の復職では75%、3回目では90%にまでのぼるとされています。(『「うつ」からの社会復帰ガイド』うつ・気分障害協会編 岩波書店より)
つまり、体調が回復しきっていない中途半端な状態で復職すると、うつ病が再発しやすくなるということです。
治療や休養によってうつ病が回復してきて、日常生活に支障がなくなっていたとしても、職場で仕事をするには、まだ回復が足りていないケースも少なくないです。
無理に職場に復帰しようとせずに、まずは体調がよいと感じるくらいまで心と体を休めることが大切です。
復職後のうつ病の再発は不安
一度うつ病で休職をすると復職をすることも不安ですが、復職後に再発を繰り返してしまうことも不安です。また、復職に失敗して休職復職を繰り返してしまうのではないかという怖さもあると思います。
しかし、復職する前に復職に向けてしっかりとリハビリをしていけば大丈夫です。
この記事では、復職後も再発をせずに元気に仕事を続けられるための方法や心構えを紹介します。
復職の方法と心構えを先に知りたい方はこちらをクリックしてください。
うつ病の回復には3段階の目安がある
うつ病の回復過程には、次の3つの段階があります。
・底期:落ち込みの底にある状態
・回復期:休養や薬の成果が出始める状態
・リハビリ期:復職を視野に入れられるようになった状態
それぞれの過程について解説していきます。
底期
底期は落ち込みのピークの時期です。
何をするにもやる気が出ず、脳内では常にマイナスの考えが浮かび、振り払えない不安が付きまといます。「このまま治らないのではないだろうか」といった不安や、未来への絶望感が湧いてくるのも底期の特徴です。
底期は、どんなにあがいても拭えないような苦しみが湧き、とてもつらい時期です。僕もたびたび底期を味わっていますが、本当につらいです。つらいという言葉では形容できないくらいつらさです。
この時期は治療を最優先しましょう。
休養と投薬に専念し、ゆっくり体を休めることにすべての時間を使いましょう。復職を考えるのは、気持ちがもう少し落ち着いてからです。
回復期
回復期は、休養や薬のおかげで徐々にエネルギーが回復する時期です。少しずつ動けるようになります。
回復期では、底期で失った体力を少しでも回復することに専念しましょう。
「朝に起きる」「食事の時間を守る」「睡眠時間を一定にする」といった生活リズムを整えることで、精神が安定してきます。
寝たきりや動けない状態だった底期では、想像以上に体力が低下しているため、散歩を習慣にするなどして少しでも体力の回復を心がけましょう。その際、無理は禁物です。自分ができる無理のない範囲で動きましょう。
リハビリ期
リハビリ期は、ひどいエネルギー低下状態は脱したものの、完全とはいえない状態が長く続くことをいいます。うつ病からの脱出に最も大事な時期は、リハビリ期です。
回復期は、一週間単位の波を重ねて少しずつ回復していきます。しかし、リハビリ期の場合は毎日の変化がほとんど感じられません。
「この状態がずっと続くのではないか」「社会復帰などできないのではないか」という不安に駆られるのが、リハビリ期でもあります。
リハビリ期では、少しずつ外に出るなどのアクションを起こして、体と心のトレーニングを始める時期です。しかし、焦りは禁物です。
リハビリ期でも波はあるので、無理なくやれることだけをやり、体調が悪いと感じた日は回復期と同様に休養を取ることが大切です。
うつ病から復職するための6つの方法
体調が回復してくると、徐々に何かをやりたい・仕事に復帰したいという欲が湧いてきます。しかし、このタイミングで「復職したい」という強い気持ちだけで復職すると、うつ病の気分の波の性質上、また落ち込みに襲われるおそれがあります。
落ち込みに襲われないような復職をするためには、事前の準備が大切です。復職をする前に、いくつか準備しておくべきことを紹介します。
復職時期を主治医と相談する
復職のタイミングは、主治医がいるのであればよく話しあってから決めましょう。仕事内容を主治医に伝え、実際に働くことが可能なのかの意見を仰ぎましょう。
また、もし主治医から「復帰しても大丈夫です」との言葉をもらったとしても、自分の中ではまだ復職できる状態ではないと感じるのであれば、その旨も伝えましょう。大事なのは、自分自身が復職に納得できるかどうかです。
職場の上司と相談する
復職する前に、職場の上司とは復職についてよく相談することをおすすめします。
無理をして平常心を装って復職して、仮に休職となってしまった場合、上司と自分自身、お互いに損だからです。
ある程度の期間、出退勤の時間や出勤日、残業時間の有無、仕事内容について配慮がいただけるのであれば、少しでも働きやすいように会社に掛け合ってもらいましょう。
もし、正式な職場復帰決定の前に「試し出勤制度」などが利用できるのであれば、それを活用するのも一つの手段です。
できないことを確認する
うつ病になると、今まで普通にできていたことができなくなります。できない自分を見てしまうと、強い無力感を感じて自分を責めてしまう悪循環に陥りやすくなります。まずは、自分ができなくなったことを一つずつ確認して、できるような訓練をしてみましょう。
例えば次のようなイメージです。
・外に出るのが億劫になった→一歩でも外に出てみる
・人と話すのが怖くなった→コンビニで店員さんに話しかけてみる
・電車に乗ると気分が落ちる→一駅分でも電車に乗ってみる
できなくなったと感じていたことが「できるようになった」に変わるものが多くなってきたとき、それが小さな安心の積み重ねになり、復職の自信になります。
回復期を抜けたリハビリ期に挑戦してみましょう。
自分ができることを確認する
うつ病になると、何に対しても自信を持てなくなるため、少しでも失った自信を回復させることが大切です。自分ができることを確認して「自分はできる」と自信を少しずつ得ていくのが効果的です。
具体的には、家事に取り組むことがあげられます。家事であれば、少し動けるようになった段階でも取り組むことができるからです。
掃除機をかける、皿を洗う、洗濯をする、料理をする、など、家事という仕事を通して、リハビリをするとともに、自分ができることを一つ一つ確認して自信を取り戻していきましょう。
復職後のシミュレーションをする
復職後のイメージをしておくことも大切です。
あらかじめ仕事のシミュレーションをしておくことで、自分が何をすべきかという不安が払拭されるので、復職したあとの仕事に対しても自信を持つことができます。
伝票の受け渡し方や、ファイリングの仕方、見積書の作成方法、交通費の清算まで、新入社員になったつもりで、今一度会社でのワークフローをイメージしておきましょう。
また、復職前に何度か会社の近くまで行ってみることもおすすめです。
決まった時間に起き、身支度を整えて、電車に乗って会社の最寄り駅に行き、ビルの壁をタッチして帰ってくる、といった具合です。
これが一週間連続でできるようになると、少なくとも会社に通うことはできるのだという自信につながります。
貯金額を確認する
休職期間中、かなり大きなウエイトを占めるであろう悩みはお金の不安です。
休んでいる間は傷病手当でも受給していない限り収入がありませんし、自分がいつまで休むのかもわかりません。いつお金が尽きるのかわからない、尽きたらどうしようという不安は、精神をむしばみます。
お金の不安を和らげる方法は「貯金額を確認する」です。
現在ある貯金額を確認し、一か月で出ていくお金(支出)と照らし合わせることで、現実にあと何ヶ月生活できるかが見えてきます。
「見えないこと」が一番の不安なので、まずは自分の貯金額と支出額を確認して、お金に対する不安を少しでも軽減しておきましょう。
うつ病と付き合いながら働くための5つの心構え
いざ復職となったとしても、ほとんどの人はうつ病が完全に癒えていないはずです。そもそもうつ病は完治するものではなく、一生付き合っていく性格のようなものだからです。
では、うつ病が落ち着いたとはいえ、うつ病のまま復職したときにどのようなことを意識して働けばよいかについて解説します。
意識することは次のようなものがあります。
寝る前に朝の準備をしておく
うつ病の人にとって、出社することは何よりも難しいことです。うつ病患者の多くは、朝が一番つらい時間帯なので、朝を攻略することが大事になります。
朝のストレスを減らして楽に過ごすために、前日の夜に朝の準備をしてしまいましょう。
具体的には以下のようなものがあります。
・翌日着るものを枕元に置いておく
・翌日の持ち物をすべてカバンに入れておく
・カバンを玄関に置いて、靴をそろえておく
朝に感じるストレスを最小限に抑え、うつ病の不安に飲まれる前に家を出発してしまいましょう。
できなくなったことを嘆かない
どんなに復職に向けて万全な準備をしても、できないことに直面する場面が必ず出てきます。うつ病でなくても同じです。
できないことに直面したときに一番大切なことは「開き直る」ことです。
復職後は元気だった休職前の自分と比べてしまいがちですが、当然いきなり以前と同じように働くことはできません。
あれもできないこれもできないと嘆いていても、徐々に自分への自信がなくなってしまいます。落ち込まないためにも、たとえできないことがあっても、それは仕方のないことだと開き直ってしまいましょう。
体調が悪いとき用の仕事を設定しておく
気分が落ちているときは通常の仕事ができなくなります。
無理に通常の仕事をしようとすると、心身に影響をきたします。なので、あらかじめ体調が悪いとき用の仕事を設定しておきましょう。
体調が悪いときの仕事リストのようなものを作っておくと便利です。
・書類受けを整理する
・ごみを捨てる
・To Doリストを作る
といった簡単なことにしておきましょう。
うつ病であることを周りに伝える
うつ病は隠すことでも隠しきれる病気でもありません。むしろ、カミングアウトしてしまった方が良い類の病気です。風邪をひいたら風邪をひいたと周りに伝えるように、うつ病であることも周りに伝えましょう。
うつ病を隠すと、隠し続けることもストレスになりますし、もし仕事で失敗したときに周りからの理解が得られないので余計に気持ちが落ちてしまうことになります。そのため、あらかじめうつ病であることを周囲に伝えることは、精神の安定を図る上でも大切なことです。
うつ病は周りからの理解や協力がどうしても必要な病気です。カミングアウトすることはつらいし厳しいことですが、改善させるためには正念場ととらえて、勇気を振り絞りましょう。
まだ頑張れると思った所で止めておく
復職をしたての頃は「休んだ分、早く追いつかねば!」という気持ちになりがちです。しかし、無理をして残業などを積み重ねていくと、いずれ心身に支障が出て、うつ病の悪化につながりかねません。
復職して間もない頃は、体力がまだ完全に戻っていないため、無理は禁物です。自分が感じているよりも、体も心もまだ回復しきっていません。不完全な状態で、完全な仕事をこなそうとすると必ずがたがきてしまいます。
病気であることを理由に使ってでも、残業を避け、できうる限り無理のない毎日を送りましょう。
おわりに|復職はゴールではない
うつ病で休職すると復職が最終目標と考えがちですが、復職はゴールではありません。復職したその先が重要です。復職してからもずっと仕事を続けられるような精神状態・心身状態を保てるかどうかが重要です。
なんの準備もしない状態でいきなり復職すると、結局はうつ病が再発しやすくなって、休職なんてこともありえます。早くに復職したい気持ちは、僕自身も痛いほどわかりますが、できるだけ休養に専念し、事前に負担を軽くするための準備を重ね、できるかぎり万全の状態で復職への一歩を踏み出しましょう。
また、元の職場に戻るのではなく、転職するという手段もあります。僕は転職という手段をとりました。
ストレスの原因が職場にあるのであれば、会社を辞めて転職することも一つの手段ですので、休職期間で時間がある今だからこそ、今一度考えなおしてみましょう。
うつ病から復職を考えているすべての人が、元気で働ける日が来ることを心から願っています。
記事を書くにあたって参考にした本
また、この記事の内容は『うつからの脱出』『「うつ」とよりそう仕事術』という2冊の本を参考にして書いているので、もっと深く知りたいという方は本を読むことをおすすめします。
『うつからの脱出』は、うつ病の底期・回復期で苦しんでいる人向けに、『「うつ」といよりそう仕事術』は、リハビリ期で復職を視野に入れ始めている人に特におすすめです。