認知症、あるいは認知症“かもしれない”ご家族を持つすべてのあなたにこの記事を捧げます
僕自身が同居している祖父母の認知症にずっと苦しめられているので、痛みが手に取るようにわかります
「認知症は本人の方が辛い」
そんなことはわかってる、わかってるけど自分も辛いんだ
そんな人に読んでもらいたい
もしかしたら家族は認知症なのかも?
と悩んでいる人に読んでもらいたい
老人を抱える家族には、綺麗事だけじゃ片付かない現実があります
①いったいどんな症状があるのか
→認知症の傾向があると知って安心してほしい
②その症状に対してはどう対処すればよいのか
→心構えや対応を知ることで負担を軽減してほしい
この2点を目的として記事を書きました
目次を用意しましたので、クリックして記事のお好きなところからお読みください
- はじめに 認知症って何?
- 認知症の症状一覧と対処法
- おわりに 一人で抱え込まないで
はじめに 認知症って何?
そもそも認知症とはなんぞやというと、以下の通りです
かつては痴呆症といわれていた「認知症」とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを指します。
認知症は病名ではなく、まだ病名が決まっていない“症候群”です。つまり医学的には、まだ診断が決められず、原因もはっきりしていない状態のことを表しています。(以下サイト参照)
とはいえ認知症の症状のパターンはたくさんあります。世間では「物忘れ」や「徘徊」などが取り沙汰されますが、これは認知症の症状のほんの一部、氷山の一角にすぎません。認知症の家族を持つ人たちは、それぞれがそれぞれに苦しみを抱えていて、家庭の背景も相まっているのでその内容も千差万別です
「これだから認知症」とは一概には言い切れませんが、それでも「認知症の傾向」というのはあります
この記事を読んで「もしかしたら当てはまるかも」と感じて行政や病院に動くきっかけになったり、「あーうちの母親認知症かもしれない。だから悪口が多いのか」と心の負担を軽減する一助になれれば幸いです
認知症の症状一覧と対処法
物忘れ・記憶障害
物忘れと記憶障害は早期からみられる症状のひとつです
ついさっき起きた出来事が思い出せない、覚えていたことや知っている人の名前が思い出せないなどの症状がそれに当たります
物忘れと記憶障害の違い
物忘れは「忘れてしまった」という自覚があるものを言います
記憶障害は、体験した出来事や過去の記憶が抜け落ちてしまう障害のことで、忘れてしまったことを自覚できていないものを言います。具体的には以下のような症状が当てはまります
- 新しい出来事が覚えられない:病院の診察予約を忘れる
- 覚えていたことが思い出せない:人の名前が出てこない等
分類上はこのように分けることができますが、実際に周りの人が感じる症状としては大差ないので、まぁこういう分類があるんだなくらいに留めておいてください
物忘れへの対応
間違いを指摘したり、非難することをせず、その時々の認識にあわせることが大切です。感情的になかなか難しいですけどね(^^;)
本人もわざとやっているわけではなく、内心ショックを受けていることも多いのであまり責めないであげてください
怒りやすくなる
人によっては顕著に表れます。僕の祖父がこれです。怒る理由は特になく、本人自身もなんで怒っているかがわからないことが多いですが、認知症の人が怒りっぽいのは、感情抑制ができなくなるからといわれています
怒りへの対応
まともにやりあうと疲れるし、正直意味がないです
なので本人の怒りの理由を知ろうとせず、まずは何を言っているのかに耳を傾けてください。ただ「なんで怒ってるの?」といった質問は禁句です。その質問に答えられない自分が腹立たしくなり、余計に怒ってしまうからです
これに関しての僕の対応としては
「そうなんだね」「そうなの?」と聞き返してその場をやり過ごす
ということをしています
なお、認知症ねっとでは以下のような会話が推奨されています
本人「あなたは一体何を考えているの、まったく」
あなた「私が、何を考えているのでしょうか?」
本人「そうよ、その手には乗らないから」
あなた「その手に乗らないって?」
本人「何いっているの。わかっているくせに」
あなた「何がわかっているのでしょうか」
本人「もういい、あなたは調子がいいのだから」
あなた「・・そうね・・、ご免なさいね」
このように、本人の言っている会話をそのまま本人に質問として返すことで、「もう、いいわ」と怒るのをやめてしまうことがあるからです。認知症ねっとの場合でもやはりやり過ごすことが吉とされているみたいですね
まともに向き合うとこちらが疲弊してしまうのでやめておきましょう
暴力、暴言、悪口を言う
僕の祖父母はこれが顕著です。毎日のように家族・親戚・地域の人など手当たり次第すべての人への悪口を言っています。ですが、これは本人が悪口と自覚していないことが多いです。ただの会話の内、という認識でいます
原因としては、怒りやすいときと同様に感情の制御ができないためです。特に怒りを感じたときに、それをうまく表現できないことから暴力や暴言に至ります
あとは自分ができないことを、周りのそれが出来る人に対して羨望・嫉妬の意味で悪口を言うこともあります。相手を落とすことによって自分の価値を保とうとするからです。なので若い人、特に自分より立場が低い人(抵抗できない人)への悪口は顕著です。嫁さんは大変だと思います。。。
悪口・暴力への対応
最も良い方法はキョリを置くことです
決して正面から対峙してはいけません。話し合うだけ無駄なので
嵐が過ぎ去るのをただ待つ、それに限ります
「好き勝手悪口を言われて腹が立つ」
「近所の人に私の悪口を言われてとても困る」
そういう場合もあるかと思いますのでその場合は
「好き勝手悪口を言われて腹が立つ」
→宇宙人が話していると捉えて無視をする
「近所の人に私の悪口を言われてとても困る」
→あらかじめ近所の人には家族が認知症であることを伝えておく
この方法が有効です
お金に執着する
お金に対してものすごい執着と警戒心をもつことがあります
人や自分が信じられなくても、お金というものは逃げない唯一の信頼できる存在だからです
例えば実家に同居しているとしたら
「家賃払ってちょうだい!当たり前でしょ!」
といって、今までは徴収しなかったものまで徴収しようとしたり
「あれ買ってちょうだい。年金が少なくてお金出せないのよ」
と自分のお金の出し惜しみをしたりします
もっとひどくなると
「お前!俺のお金盗んだだろ!」
「あなた!私の財布どこへ隠したの!」
などと盗まれた妄想が始まります
「死んでもお金はもってけませんよ?」と言いたくなる気持ちはとってもわかりますが、そこはぐっとこらえて。。。
お金に執着しているときの対応
これについてはそっとしておく以外にないと思います
もしも「盗まれた」等と騒ぎ出したら一緒に探してあげましょう。そこで一緒に探さないとあらぬ疑いをかけられてしまうこともありますので
なお、盗まれた妄想が起こったときは、いくら証拠を突きつけても脳が正常に働いていないので、監視カメラや会話の録音という対応はあまり効果がないと思えます。本人が納得いくまで寄り添ってあげましょう(いやなのは重々わかります。。。泣)
同じことを何度も繰り返し言う
脳機能が衰えると、直前でも過去に話した内容の記憶が難しくなります。そのため、同じ内容の発言を繰り返すようになります。物忘れと似ていますね
昔話だけでなく「今日の夕飯はなんだ」といったことも繰り返し言われるので、受け手としては「わざとじゃないの?」と思ってしまいますが、本人はいたって本気ですので、むかつかないようにしましょう
同じことを言われたときの対応
初めて聞くような顔で相槌を打ってあげましょう
本人には同じ話をしている認識はありませんので、「また同じこと言ってる」などと突き放してしまうと反感を買ってしまいます。それこそ怒りやすい状態なので刺激の材料になりかねませんので
徘徊
よく浮かぶ徘徊のパターンは家の外に出てしまうことですが、実は家の中をうろうろ動き回るのも徘徊に該当します。傍目には目的不明に見えますが、本人の中では目的がある場合が多いです
原因は不安やストレスによるものが多いです
また「自分はまだ若い。なんでもできる」ということを確認するために、ひたすらに歩き回ったり同じところを何度も掃除したりもします
徘徊への対応
徘徊が起きたら無理に止めないことが大切です
「どこにいきたいの?」と声をかけるくらいにとどめておきましょう
止めようとすると逆効果になりかねません
もし外に出てしまったら最悪の場合は警察に通報しましょう
万が一のときに備えて、洋服等に氏名や連絡先のわかるものを縫い付けておくと安心です
弄便 (便をいじること)、失禁、排尿障害
弄便(ろうべん)とは、自分が排泄した便をいじって、壁や床にこすりつける行為のことをいいます。
原因は人によって異なりますが、多くは便を便だと認識していないことや、オムツに排便・排尿することに不快感を持っていることから起こります。決してわざと触っているわけではないのです
弄便への対応
最も理想は「排便のリズムを把握し、事前にトイレに誘導する」ですが、そううまくいかないかと思います。きっと事後の対応になることが多いと思うのでその場合は怒ったりせずに
- 叱らずに不快感を取り除く
- 掃除をしやすくする(ベッドや布団周りなどに防水シートを敷く)
この2点を意識しましょう
見当識障害
いまいる場所や時間、人、季節がわからなくなる状態です
場合によっては排泄の仕方もわからなくなるので弄便の症状とも被りますし、場所がわからないという性質から徘徊と通ずるところもあります
見当識障害への対応
これについては認知症ねっとに詳しく書いてあるのでリンクを貼っておきますが、簡単にまとめると
- 間違いを責めずに理解してもらう工夫をする
- 「症状」であることを理解し、振り回されないようにする
この2点が大切になります
せん妄、幻覚、錯覚
せん妄とは、病気や薬の影響、環境の変化などによって意識障害が起こり、混乱した状態のこと。時間や場所がわからなくなったり、幻覚を見たり、興奮するといった精神症状が出ます。人格が変わってしまったように感じることもあるでしょう。
暴れたり、周囲に対する暴言や暴力が出ることもあり、治療や看護にも大きな影響を及ぼします。
実際には存在しないものが見えたり聞こえたりすることもこの症状の一つです。ただ注意したいのが、これが認知症が原因で起こっているものなのか、それとも別の病気が原因なのかが難しいという点です。なので、ベストは対応としては「医師に相談する」のがベストだと思われます
せん妄、幻覚、錯覚への対応
上述した通り、医師に相談するのが最も良い対応だと思われますが、そこまでにできる介護者側の対応としては
- 無理に止めたり反論したりせず、様子を見る
- 穏やかに声をかけ、不安感を取り除く
この2つが無難です
「大丈夫だよ」と優しくゆっくり声をかけてあげることで本人が安心できるようにしましょう
うつ、抑うつ
以外と認知症の症状として多いのが「うつ・抑うつ」です
僕の祖母もその傾向があります
症状としては「気分が落ち込む、眠れない、食欲がなく食べない、感情が鈍くなる、何に対しても興味を示さない」といったものが多いです
原因としては生活環境の変化が主にあげられますが、他には飲んでいる薬の副作用が影響している例もあります
うつ、抑うつへの対応
うつ病の人への対応と同じですが、どんなに起きるのが遅くてもご飯を食べれなくても怒ったり注意したりしないであげてください。本人も精一杯頑張っているので
不眠、昼夜逆転、睡眠障害
高齢になると眠りが浅くなるため、中途覚醒が起きやすくなります。結果として眠りが浅くなるので、睡眠の質が悪くなるのが睡眠障害がおこる1つの大きな要因です
また、認知症か否かにかかわらず、加齢とともに体内リズムの調節機能が衰えてくるのですが、認知症になると更に悪化する傾向があるため、認知症の人は特に睡眠障害が起きやすくなることがわかっています
睡眠障害への対応
- 日光を浴びさせる
- 日中の活動量を増やす
- 就寝前に入浴させる、あたたかい飲み物を飲んでもらう
この3つが効果的です
睡眠障害の場合は介護者も同じ時間に起きていなければならず、とても負担に感じると思います。なので介護者が負担を抱え過ぎないよう適度に休める環境づくりも重要です。場合によってはデイサービス・ケアマネジャーといったことも視野に入れておくと良いです
帰宅願望
家にいるのに「家に帰りたい」と言い出す症状です
「家に帰りたい」と言い出すのは、自分のいる場所や状況がわからなくなるためです。初期症状の段階だと説得できる場合もありますが、症状が進んでくると納得してもらうことは難しいです
帰宅願望への対応
「今日はもう遅いので、もう一晩泊まっていってください」、「では、お帰りになる前にお茶でも飲みませんか」などと、協力をお願いするように話したり、違うことに気を逸らしたりするのもひとつの方法です。また、「では、お送りしましょう」と一緒に外に出て散歩し、気を紛らわすのも有効です。ひとりで出て行ってしまった場合には、先回りして「お帰りなさい」と迎えてあげると、素直についてくることもあります。
もしくは
- 居心地の良い居場所を作る
- 興味がある物や趣味を知っておく
というのも改善策の一つになります
食べない
食べない原因は「体調が悪い」「食べ物を食べ物として理解できていない」の2つが考えられます
比較的早急な対応が求められる症状です
食べないことへの対応
認知症ねっとを参照していただきたいですが簡単にまとめると
- 体調を調べ、問題なければ様子を見る
- 怒らない(拒否が強くなるため)
- 無理やり口に入れない
この3点には注意しておきたいです
妄想
事実でないことを本当のことだと信じ込む症状です
「あ!私の財布盗んだでしょ!」という物盗られ妄想や「私のことだけ相手にしてくれない」といった嫉妬妄想が代表的
他にも「みんながグルになって俺を馬鹿にしている」とか「なんで監視するんだ!」といったものも妄想の類に入ります。うちの祖父母がこの傾向が強いです
実は詳しく言うと、妄想にも3種類あります
①被害者利得型
認知症の人自身が「被害者を装う」形です。構って欲しい!私を見て!と思う構ってちゃんタイプの妄想です。ものを盗まれた!と騒ぎ立てるのもこのタイプですね
②心理的負担解消型
被害者利得型とは真逆で、「大切にされすぎて心理的な負担を感じる」タイプのものです。構わないのもだめ、構い過ぎるのもだめというなんとも難儀なタイプ
③老化拒否型
「老いを認めない」タイプの妄想です。うまくできないと人や物のせいにして老いを認めようとしないのです。「まだ若いんだ!」といって自転車で遠出をしようとしたり、何かを手伝おうとしたときに拒否をするのもこのタイプです
妄想への対応
「違うよ!」と否定しても逆に「自分の言うことを信じてもらえない」と不安や怒りで妄想が強くなることがあります。「そうですか。困りましたねぇ」など相槌を打ちながら、否定もせず、肯定もしない態度で接することが吉です
とはいえ、正直気持ち的には「もう適当なこというの止めてください!」と言いたくなります(笑)
その気持ちがとてもわかります。でも悲しいことに、こればっかりはどれだけ改善方法を理論的に説明しても相手の心にはビタ一文届きません。なので相手が宇宙人だと思ってさっぱり切り捨てた方が心が軽くなりますよ
また、妄想についてはこの記事が綺麗にまとめられてます!
ここを参考にしたので詳しくはこちらを読むとわかりやすいです
おわりに 一人で抱え込まないで
もちろんこれらのいくつかが当てはまるからといって必ずしも認知症であるとは限りません。あくまで「その傾向がある」ということです。ちゃんとした診断はお医者さんにしてもらう方が無難です
が!
色々な事情でそれができない人もたくさんいることを僕は知っています
実際は認知症かどうかはわからないけども、なんとなく認知症かもしれないと感じたら自分の中では「うちのお義母さんは認知症だ」と断定しちゃってもいいと思います。それによって心の安定が保たれるなら。自己防衛です
認知症の人に対する対応を心がければ、きっと少なからず心が楽になるはずです。僕も3年間(今も)本当に苦しんでいるので気持ちがとてもわかります
また、誰にも相談できないで自分を苦しめるよりは、相談しちゃいけないかもしれないけれども思い切って相談して自分を楽にしてあげましょう。時には逃げることも大切です。この問題を自分一人が抱え込む必要はないのですから
ちなみに本記事は、僕自身の体験談をもとにしつつ『認知症ねっと』を参考にまとめましたので、詳しくはこちらを読むとより深く認知症を理解することが出来ます。よかったら覗いてみてください
その他こちらのサイトも参考になります
読者の皆様の心が少しでも軽くなることを祈っています